研究員ブログ 永久寿夫 blogtop
2011年11月28日 11:00


 この10月・11月はいろいろ国の仕事に関係することとなった。まずは行政刷新会議「独立法人改革に関する分科会」のWGのメンバーとして、主に経済産業省、厚生労働省、総務省関連の独立行政法人のヒアリングに参加した。そのあとは衆議院決算行政監視委員会における事業仕分けに参考人として加わり、さらに行政刷新会議による「提言型政策仕分け」の実況解説をPHP総研とUSTREAMのコラボレーションで行うという新たな試みに挑戦した。


 独立行政法人とは、より高い効果と効率を求めて中央省庁から切り離された現業・サービス部門である。設置からほぼ10年が経過した現段階で、人事や資金の流れなどをチェックし国費のムダ遣いをなくすとともに、現状の課題を議論することによってさらなる制度改革を進めるというのが今回のヒアリングの狙いであった。その結果についてはまだ詳しくは発表されてはいないが、ガバナンスの強化や統合によるコスト削減・シナジー効果拡大などが議論されており、いくつかの具体的な制度改革案が提出されるはずである。


 一方、衆議院決算行政監視委員会では、スーパーコンピューター「京(けい)」の活用法、診療報酬明細書の審査事務、公務員宿舎の建設費、原子力関連の独立行政法人や公益法人への支出が議論された。決算行政監視委員会とは、その名のとおり、国のおカネの使われ方や行政の活動を監視するところであり、「事業仕分け」はこの委員会の本来的使命であるといえる。また、衆院規則に基づく内閣への勧告権が与えられており、勧告がなされれば内閣はその改善状況を委員会に報告しなければならない。この委員会で事業仕分けが行われたことは、「当たり前」のことではあるものの、自治体レベルからコツコツと行われてきた事業仕分けが国の最高機関に達したという意味で、画期的な出来事であった。


 「提言型政策仕分け」ならびにその実況解説は2つの点で有意義であった。個別の事業を仕分けした結果として、その根拠や前提となっている政策に問題があることが分かる場合がある。そうなると、事業そのものではなく政策を根底から仕分けなければならない。今回の政策仕分けは、方法論的に改善の余地はあるが、事業仕分けの限界を超える初めての試みとして評価される。また、その仕分けに同時解説をしたことは、議論をしている最中に言葉を重ねざるをえないという技術的難しさはあったものの、仕分けの内容がわかりにくいという視聴者からの批判に応える一つの試みであった。


 さて、これらの仕事を通じてあらためて感じたことは、次の段階として、こうして帰納的に積み上げてきた課題解決プロセスとビジョンと国家戦略からの演繹的政策決定を結びつけることの重要性である。独立行政法人改革も事業仕分けも、その前提となっている政策を「是」とし、その政策の効果や効率を高めることを追求する作業である。政策仕分けは、その政策の是非を問うものであり、事業仕分けでは解けない課題を解決する一つの方法といえる。しかしながら、その政策仕分けもさらにその上の概念である国家戦略、すなわち政策分野を横断する資源配分、さらには日本の将来像を描くビジョンとの整合性がなければ、その意義が薄まってしまったり、逆効果になってしまう恐れがある。したがって、演繹的なアプローチと帰納的なアプローチを整合的に結合させるプロセスが今後重要となる。


 そのビジョンと国家戦略が日本にあるのかと言えば、ないわけではない。自民党政権時代の2005年、経済財政諮問会議に設けられた「日本21世紀ビジョン」に関する専門調査会(会長:香西泰)によって、わが国の政策運営の中長期的指針となすべき「日本21世紀ビジョン」が発表されている。しかし、そのビジョンといま実施されている政策さらには個別の事業が、途中政権交代があったとしても、どのような脈略でつながっているのがまったく分からなくなっている。また、2005年に完成されたビジョンが現在もまたそのまま有効であるかも分からない。つまり、帰納的なアプローチをつなぐべき上位構造が極めて曖昧になっているのである。


 我われはいま、一方で仕分けを行いつつも、その前提とすべきビジョンや国家戦略の見直しをきっちりと行っていかなければならないということである。