研究員コラム  佐々木陽一 blogtop
2013年12月18日 14:33


 茨城県龍ケ崎市の「公共施設再編成の行動計画策定に係る有識者会議」が11月、「公共施設再編成に対する提言」を中山一生市長に提出した。これに先立つ今年2月、市は、総量の削減、既存施設の有効活用、効果的・効率的な管理運営を骨子とする「公共施設再編成の基本方針」を定めていた。会議は、方針を受けて策定を目指す「行動計画」へ専門家らの知見を反映させるために設置された。急速に老朽化が進む公共施設をいかに再編していくのか。今回の提言は、同じ難問に直面している多くの自治体にとっても参考になる。


 提言の柱の1つは、全施設を再編成の検討対象とした点である。当然のようにも思えるが、庁内外の政治的軋轢を回避し、全施設を再編成論議の俎上に乗せるのは存外、難しい。そのため、提言では、施設のコストや利用状況を精査し、基準を逸脱する場合には施設の大規模改修時期さえ待たず、当該施設のあり方を前倒しで見直すことを提案している。2つは、市が行動計画の立案〜実施までの取り組み全体を市民との対話で進めるべきとした点である。


 提言は、この一連の取り組みを「公共施設の新しいカタチ」と提唱した。カタチとは、ハコ(施設)や中味(既定目的や運営方法)に留まらない。既成概念に囚われず、公共施設の機能、あり様を市民とともに創造していくために「尊重すべき市の基本的な考え方や姿勢」をも言う。公共施設の再編結果を市民に押し付けるだけでなく、計画段階からの合意形成により計画の具体化を図る狙いだ。


 市が想定しているように、当面は、公共施設の「評価手法」の確立、結果の「行動計画への登載」が課題になる。これらは再編成の起点となるので、透明性のあるルールの下で各施設の課題を可視化し行動計画の目鼻を付けること、計画の着手に必要な手法、手順などを定めた運用制度を確立することが必要である。これらは、特に、総論賛成・各論反対に陥りやすい施設、たとえば、類似機能を有する複数施設の統廃合を検討する場合に不可欠な材料となる。


 さらに重要な課題は、財政計画との連動である。市は、基本方針のなかで、財政見通しを踏まえて40年後までに「公共施設の約3割削減」という目標を掲げた。一方で、全国的にはこうした財政負担を看過し、施設存続ありきの改修計画を策定する自治体も少なくない。こうした例の多くは、財政収支の見込みが甘く中長期的な施設の存続性は危うい。建設財源とした地方債、施設の管理運営・維持更新費用は、公共施設が存在する限り大きな財政負担になり続けるからだ。


 この点について、龍ケ崎市は、公共施設を整備する場合(更新、大規模改修を含む)には、予め財政運営影響額を試算し予算を伴う計画を定めることを、昨年10月施行の「財政運営の基本指針等に関する条例」で義務付けた。財源の裏づけのある範囲内でしか公共施設の整備を認めないという主旨の条例は他例を見ない。提言は、これに市民の合意形成という新たなタガをはめる意味合いもある。現在までのところ、適用案件もないため双方は連動していないが、行動計画の実施でいずれその時はやってくる。「財政規律」と「市民参加」の合わせ技で、どんな公共施設の新しいカタチが生まれるのか。龍ケ崎市の挑戦は、多くの自治体にとっても施設再編への新たな道筋を示すものである。