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――環境を主要テーマとした北海道・洞爺湖サミットがいよいよ始まります。
1992年のリオデジャネイロと2002年のヨハネスブルクという、二つの「地球環境サミット」に参加した経験からいうと、環境というテーマがいよいよ具体的な実践の段階に入ったことを感じます。
92年のリオでは、世界中からブラジルに「集まること」に意味があったと思います。各国首脳のうち行かなかったのは日本の宮沢総理だけでした。しかし、議論の中味はまだ対立色が濃厚で、「経済発展か、環境保全か」という二者択一を乗り越える努力がなされている途上でした。また、政府とNGOが別々の場所で会議をしていたことも強く印象に残っています。ようやく終盤になって「サスティナブル・ディベロップメント=持続可能な開発」という概念に集約されていったのです。
ところが、10年後のヨハネスブルグでは「サスティナビリティ=持続可能性」が当然の前提となっていました。時間の経過の中で議論の幅は狭まり、対立から協調へと大きく様変わりしたことを肌で感じました。とりわけ10年前には隅に追いやられていた感じだったNGOが、世界の中で認知されたことも印象的でした。彼らの主張は抽象概念ではなく、具体的な実践に基づくものばかりという意味で、私の報告にも通じるものでした。世界の環境問題は議論から具体的な行動の段階に移ったことを実感したのです。
その後、持続可能性という理念の下に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が地球温暖化の検討を進め、97年には「京都議定書」がまとまりました。ここでは、Co2の削減目標を決めたものの、各国の足並みが揃わず実現できませんでした。
洞爺湖サミットでは、日本が議長国としてどれだけ指導力を発揮できるかが問われています。日本は「セクター別アプローチ」を提案することで、「今度こそやろう」というアクションプランを示したことになります。事前の外交努力によって各国をテーブルに着かせるところまでは来ました。流れとしては良い線に乗っていると思います。
途上国側の主張は「自分たちにだって成長する権利がある」というものです。経済水準が上がる段階で、投資が行われてCo2の排出量が激増します。仮に施設は高水準のものを建設しても、適正に管理する仕組みがないのが問題です。だから、ODAは金銭面から人材面にシフトせざるを得ないのではないでしょうか。そうなると実施レベルでは地方自治体の役割が大きくなります。環境外交は国と地方が一緒に取り組むべき課題です。
「環境国際協力」は日本の外交課題ですが、地域にとっては目の前の「退職世代対策」でもあり、また将来に向けた「産業戦略」でもあるのです。環境がビジネスになる時代に、大事なのはビジネスモデル、つまり仕組みの話です。これからの海外援助はお金よりも人材であることは疑いありません。
「不易と流行」でいうなら、環境問題を「流行」から「不易」に捉え直す必要があります。つまり、あらゆる政策課題の中で環境を最上位概念に置くということです。「環境と子育て」、「環境と医療」、「環境とまちづくり」、「環境と文化」のように、あらゆる政策分野に環境という概念を被せた時に、それを実現する場は地方自治体であって中央省庁ではないことがわかります。
かつて滋賀県知事を務めた武村正義さんが、「県政に文化の屋根を」と公共事業予算の1%を文化施策に投じるなどの取り組みをしました。これにならって、これからの自治体政策の基本に「環境の屋根」をかぶせることを提案したいのです。
中央省庁のタテ割りではできないけれど、地方自治体でこそできることは多いです。たとえば「環境と保育」を考えた場合、これまでは環境分野の施策と保育分野の施策はタテ割りで別々に講じられてきました。資料を求めても、双方の資料が別々に出てくるのが従来型の行政です。両者を並列で考えるのではなく、環境を上位概念として発想することがこれからの政策立案には極めて重要になると私は思います。
地球規模で発想するなら、子育てや保育は貧困や性差別や人権の問題まで含めて環境問題と一体化しています。世界の中では、子育ては環境問題の一部として論じられているのです。ただ「環境と経済」の両立だけを考えるのではなく、あらゆる施策を環境との関係で捉えるようになれば、タテ割りでないヨコ糸行政の現場という意味で、地方自治体の役割は大きく変わります。
すでに地球規模での合意はできあがったわけですから、地方自治体レベルで展開する段階に入ったと思います。いまや環境を基本思想に地域政策を展開する時代です。私自身、まだ体系的には整理できていませんが、直感としてそう感じます。
――個々の施策レベルの問題ではなく、発想の前提を変えるということですね。
「環境を中心に地域政策を見直す」という決意が必要です。これはコペルニクス的転換であるといえるでしょう。環境をテーマにヨコ串を刺すには地方自治体の住民目線が必要です。それぞれの地域が創意工夫してベストプラクティスを競っていけば、日本は環境の世紀のトップランナーとなって、世界のモデルになることができると思います。具体的な各論を競い合うことがこれからの自治体間競争の大きなテーマです。
ヨコ糸政策は地域にしかできません。だからこそ自治体の政策立案能力を高めなければなりません。実例はすべて地域にあります。しかし、これまでは地域のさまざまな主体が個別に見て個別に動いていたといえるかも知れません。それらを統合して地方自治体としての全体像を構築していくことこそ、これからの首長に求められる重要な「術」にほかならないでしょう。
“環境の屋根”をかぶせて、地域政策のベストプラクティスを競う。次回はその具体的なヒントについて、ふたたび北九州市の実践についてうかがいます。
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